記事の概要
医療機関の広告については「医療法」によって規定されています。そして、同法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」の規定による規制の対象となる「医療に関する広告」の該当性については厚生労働省のガイドラインによって示されています。
この記事では、広告に該当する要件についてガイドラインを引用しながら具体的に解説します。
医療法における「広告」の定義
医療法第2章第2節「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」の規定による規制の対象となる医療に関する広告の該当性は2つの基準で判断します。次の1と2のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断されます。
- 患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
- 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
「誘因性」について
「誘引性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物の客体の利益を期待して誘引しているか否かにより判断します。例えば新聞記事は、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、1.でいう「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱われます。したがって、医療法上の広告には該当しません。
ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当します(広告に該当した上で省令第 1 条の 9 第 1 号の規定に基づき禁止されます)。
「特定性」について
「特定性」については、複数の提供者又は医療機関を対象としている場合も該当するとされています。したがって、複数の提供者や複数の医療機関を対象としたものも医療法上の広告に該当する場合があります。
実質的にみて「広告」と判定されるもの
実質的には広告と判断される可能性が高いため、広告規制の対象となることを避ける目的で、外形的に上記要件に該当することを回避するための表現をするケースがみられます。このような場合には、実質的に「広告」と判断されるケースが多いです。例えば、
- 「これは広告ではありません。」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません。」との記述があるが、病院名等が記載されている
- 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」といった表示をしているが、住所、電話番号及びウェブサイトのアドレス等から病院等が特定可能である
- 治療法等を紹介する書籍、冊子及びウェブサイトの形態をとっているが、特定(複数の場合も含む。)の病院等の名称が記載されていたり、電話番号やウェブサイトのアドレスが記載されていることで、一般人が容易に当該病院等を特定できる
等のような場合には、実質的に上記1及び2の要件をいずれも満たす場合には、広告に該当すると判断されます。
また、
- 新しい治療法等に関する書籍等に「当該治療法に関するお問い合わせは、○○研究会へ」等と掲載されている
のように、当該書籍等では直接には病院等が特定されず「当該書籍は純然たる出版物であって広告ではない。」等として、広告の規制の対象となること回避しようとする場合もあります。 しかし、このような場合であっても、連絡先が記載されている「○○研究会」や出版社に問い合わせると特定の医療機関(複数の場合も含む。)をあっせん等していることが認められる場合であって、当該医療機関が別の個人や出版社等の団体を介在させることにより、広告規制の対象となることを回避しようとしていると認められる場合には、これらは、いわゆる「タイアップ本」や「バイブル本」と呼ばれる書籍や記事風広告と呼ばれるものとして、実質的には、上記1(誘因性)及び2(特定性)いずれの要件も満たし、広告に該当します。
さらに、患者等に広告と気付かれないように行われる、いわゆる「ステルスマーケティング」等についても、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼している場合などは、実質的には上記1及び2の要件を満たしているため広告に該当します。
暗示的または間接的な表現も含まれる
医療に関する広告については、直接的に表現しているものだけではなく、当該情報物を全体でみた場合に、暗示的や間接的に医療に関する広告であると一般人が認識し得るものも含まれます。
例えば、次のようものは、医療に関する広告に該当するため、広告可能とされていない事項や虚偽・誇大広告等に該当する場合には、禁止されます。
名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
- アンチエイジングクリニック又は(単に)アンチエイジング
→アンチエイジングは診療科名として認められておらず、また、公的医療保険の対象や医薬品医療機器等法上の承認を得た医薬品等による診療の内容ではなく広告不可。 - 最高の医療の提供を約束!
→「最高」は最上級の比較表現であり広告不可。
写真、イラスト、絵文字によるもの
- 病院の建物の写真
→当該病院の写真であれば広告可能です(法第6条の5第3項第7号)が、他の病院の写真は広告で使用不可。画像素材・イメージ画像については個々に判断が必要。 - 病人が回復して元気になる姿のイラスト
→効果に関する事項は広告可能な事項ではなく広告不可。また、回復を保障すると誤認を与えるおそれがあり、誇大広告に該当するので広告不可。
新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載することによるもの
- 新聞が特集した治療法の記事を引用するもの
→法第6条の5第3項第 12 号で認められた「治療の内容」の範囲であり、改善率等の広告が認められていない事項が含まれていない場合には、引用可能。 - 雑誌や新聞で紹介された旨の記載
→自らの医療機関や勤務する医師等が新聞や雑誌等で紹介された旨は、広告可能な事項ではないので、広告不可。 - 専門家の談話を引用するもの
→専門家の談話は、その内容が保障されたものと著しい誤認を患者等に与えるおそれがあるものであり、広告不可。また、医薬品医療機器等法上の未承認医薬品を使用した治療の内容も、広告可能な事項ではなく広告不可。
病院等のウェブサイトのURLやEメールアドレス等によるもの
- www.gannkieru.ne.jp
→ガン消える(gannkieru)とあり、癌が治癒することを暗示している。治療の効果に関することは、広告可能な事項ではない。また、治療を保障している誇大広告にも該当し得るものであり、使用不可。 - nolhospi@xxx.or.jp
「nolhospi」の文字は、「No.1Hospital」を連想させ、日本一の病院である旨を暗示している。「日本一」等は、比較優良広告に該当するものであり、使用不可。
まとめ
タイアップ本を企画する出版社や広告を企画する印刷会社などは各種法令に精通しているとはいえません。コンテンツのリーガルチェックについては、専門の特定行政書士にご依頼下さい。